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月というのは情緒の向かう先である一方、西洋文化の文脈では、むしろ「狂気」と結びつけられる。狼男は満月の夜に変身するし、シェークスピアも、男の愛の不実を月の満ち欠けになぞらえている(でも欠けたってまた満ちるんならそれはそれでいいんじゃないかなあ…いや、ダメか)。

 

研究室の新歓イベントで鞍馬山を踏破し、夜のコンパで馴れない幹事を務め、とにかくくたびれた1日だった。二次会の声があがる中でそそくさと退散してしまったのだが、百万遍の賑やかさを通り抜け、大学の静けさで一息ついていると、今日はたいそう良い月が出ている。夏に差し掛かったとは言え、夜風はまだ涼しい。誰に気を遣うことのなくなった酔いが、いい具合に思考を殺してくれる。李白に『月下独酌』という連作があるが、なるほど月をしらふで眺めるというのは勿体ないのかもしれない。「月が綺麗だ」という言葉は、別に同意を求めずともいい。ただ、そう言ってしまえばいいだけのことだ。