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ある正月のスケッチ

我が家の初詣は正月の2日、日光に行くのがお決まりとなっている。

 

 

田舎者なのでどこかへ行くというと迷うことなく車であって、ハンドルを握っているのは、始めから終わりまで父だった。近年は私が免許を取ったために、少しずつ不肖の長男に運転席を譲りつつある。ただしこの長男は父の土地勘と反射神経を一切受け継がなかったため、せっかく居眠りを始めても、要所要所で息子に起こされてしまうのである。

 

「道が混むから早めに行くぞ」などと言っていても、結局家を出るのはいつも10時過ぎになる。鹿沼インターから日光宇都宮道路まで、そう混まずに来た。それをいいことに、なにも考えずに日光インターで降りたのが間違いだった。下道が動かない。普段ならあり得ない光景だが、正月は正月だし日光は日光ということだろう。

 

輪王寺側から回って、東照宮二荒山神社へと歩いて行く。今年は暖かいのだろうか、雪が全く無い。「ふくーよこいこい」という例のヤツが、境内に無限ループしている。東照宮の門前では、今年も笛売りのじいさんが健在だった。あのウグイス笛の音を聞かなければ、どうしても物足りなさを感じる。まああと何年聞けるか分からないが(といってもう20年は聞き続けている)

 

「末吉」という近年まれに見る微妙なおみくじを引き当てて、車は一路いろは坂を登り、奥日光を目指す。日光まで来たのだからもう少し足を伸ばして湯元温泉に行こう、というのは人間として当然の判断だ。

正月早々ヘアピンカーブの連続を超え、さらに中禅寺湖の先に行こうという人間はそういないようで、ここはいつ行っても実に閑静だ。湖畔のささやかな温泉街は、足を踏み入れた瞬間に硫黄の匂いがする。街外れの湿地帯に源泉があって、そこから川伝いに温泉は湖へと注ぎ込む。だから、冬になっても湖は完全に凍ることはない。湖の名前を「湯ノ湖」という。

 

県民割引がある、という理由で、休暇村のビジター入湯を利用するのが恒例だ。掛け流しのお湯(冬は温度調整の都合で加湯してるらしいが)で、湯質に関しては間違いがない。単純硫黄泉のにごり湯で、空気との反応の仕方により白く見えたり緑に見えたりする。長々と車を走らせてくるだけの価値は十分にある。

 

昼前に宇都宮の家を出て、こんなことをしていたら帰ってきた頃には日がすっかり落ちていた。サリーが和室のコタツで、ふてくされたようにして寝ていた。気が付けばこの子も今年でもう7歳である。